ネッコ坂の歴史と由来

ネッコ坂は原宿のキャットストリートがある神宮前5丁目12番と16番の間を通る細くてくねくねしている坂道です。坂をずっと登っていくと国道246号に通じます。

坂の道中には天理教中央大教会があり、そこを屈折して南へ登る坂で、そのかたちが木の根っこのようにカーブしていることからネッコ坂といいます。

「府内場末其他往還沿革図書」によると旗本であった稲葉長門守の屋敷北側を西の隠田(おんでん)へゆく道を「ネッコサカ」として、その坂下には庚申塚が明記されているので、想像以上に古くからある坂道だということがわかります。

坂下の谷は渋谷川の上流が流れていてここら一帯は古くより隠田(おんでん)と呼ばれてきました。その名の通り、隠田とは租税を納めない隠し田です。

しかし隠し田が堂々と地名として存在するのはおかしいと「渋谷区史」には記されています。一説によれば「源氏の末裔である恩田某がこの地に住みついたので、恩田の地名が起こり、のちに隠田に転化した」という話もあります。

渋谷川が流れていた原宿キャットストリートは現在暗渠となっていますが、表参道と交差する「参道橋」には橋石が残されています。そこには葛飾北斎による浮世絵「穏田の水車」が紹介されており、暗渠になる前の渋谷川を望むことができます。

その絵には水車と富士山が描かれていることから、江戸時代には原宿から富士山が望めるほど立派な景観だったことがわかります。

 

ネッコ坂の近くにある坂

ネッコ坂界隈にある有名な坂をご紹介します。

《勢揃坂》
勢揃坂(せいぞろいざか)は別名源氏坂ともいいます。

1083年の後三年の役の時、源義家が軍隊をここに集めたのが由来になっています。竜厳寺の門前を西へ下る坂で、現在では国学院高校の近くにあたります。

ここよりも神宮前2丁目、3丁目東南に当たる青山往還へ出るあたりが昔の勢揃坂だったという説もあります。

 

《観音坂》
千駄ヶ谷1丁目、2丁目の境を通る坂道で、右手にほうに真言宗の聖輪寺、左手には曹洞宗の瑞円寺があります。カーブした坂を下っていくと国立競技場南側の通りにでます。

坂の由来は聖輪寺の如意輪観音に起因しています。

 

《榎坂》
観音坂の近く、千駄ヶ谷2丁目にある曹洞宗瑞円寺の裏を南に降る坂道です。

外苑西通りの左手にあたるここら一帯は高台となっており、古くからの寺町になっています。上記の聖輪寺や瑞円寺、仙寿院など多くの寺が集まっています。

瑞円寺の地続きに日蓮宗仙寿院がありますが、その境に樹齢800年の榎の木があったことが坂名の由来になっています。ちなみに榎坂の坂上には、江戸時代に千駄ヶ谷の総鎮守であった「八幡坂」があります。